2008/03/24 日記<ドグラ・マグラ>
ドグラ・マグラ
『ドグラ・マグラ』は、探偵小説家夢野久作の代表作とされる小説である。構想・執筆に10年以上の歳月をかけて、1935年に刊行された。
その常軌を逸した作風から一代の奇書と評価されている。「ドグラ・マグラ」の原義は、作中では切支丹バテレンの呪術を指す九州地方の方言とされたり、「戸惑う、面食らう」がなまったともされたりしているが、明らかではない。本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす、と称されている。
『ドグラ・マグラ』の基本的な骨格は、大正15年頃、九州帝国大学医学部精神病科の独房に閉じ込められた、記憶喪失中の若き精神病患者の物語(と思われる)であり、「私」という一人称で語られていく。彼は過去に発生した複数の事件と何らかの関わりを有しており、物語が進むにつれて、謎に包まれた一連の事件の真犯人・動機・犯行手口等が次第次第に明かされていく。そうした意味では既存の探偵小説・推理小説の定石に沿っている。が、その筋立てが非常に突飛である。
胎内で胎児が育つ十ヶ月のうちに閲する数十億年の万有進化の大悪夢の内にあるという壮大な論文「胎児の夢」(エルンスト・ヘッケルの反復説を下敷きにしている)や、「脳髄は物を考える処に非ず」と主張する「脳髄論」、入れられたら死ぬまで出られない精神病院の恐ろしさを歌った「キチガイ地獄外道祭文」などが挿入されており、すべてが渾然一体となって読者の常識を転倒させる破天荒な展開となっており、
まともに要約することは到底不可能な奇書である。
特に、主人公とも言うべき青年が
「ドグラ・マグラ」の作中で「ドグラ・マグラ」なる書物を見つけ、「これはある精神病者が書いたものだ」と説明を受ける場面については、特徴的かつ幻覚性を感じさせる極めて奇異なシーンである。その際、登場人物の台詞を借りて、本作の今後の大まかな流れが予告されており、結末部分までも暗示している。この点も奇異であり、一種メタフィクショナルとも評し得る。
その結末は様々な解釈が可能であり、便宜上「探偵小説」に分類されているものの、そのような画一的なカテゴリには到底収めきることはできない。一度の読了で作品の真相、内容を理解することは困難なため、多くの読者が数度にわたって再読することが多い。なお、この「内容が複雑なため読者は最低二度以上の再読を余儀なくされる」という事実は、上記の「ドグラ・マグラの作中のドグラ・マグラ解説シーン」で語られている。また、冒頭に記されている巻頭歌が非常に印象的である。
長文に渡る大作であるが、2007年末、著作権が消滅した文学作品を公開しているウェブサイト『青空文庫』に収録されており、インターネット上で読むことができる。